ドクターからの手紙
私の母は妹を生んだ翌日に死にました。お産の時の大量出血が原因です。私が2才の時でした。嘆き悲しんだ父は産科医を訴える事を考えましたが「医師の将来のため、やめよ」との祖父の一言でやめました。テレビでは安易に「訴えてやる」という番組をやっていますが、やめてほしいです。裁判ばかりになれば世の中ぎくしゃくするではないですか。
医療事故が起こったとき、その医師に責任を負わせてもなんの解決にもなりません。個人の責任にすればその後の医療行為が萎縮します。なぜ事故が起こり、どうすれば再発が防げるかを考えるべきです。個人の能力の問題であればその医師を再教育しなければなりませんが、事故の多くは医療体制の問題であり、体制を変えなければなりません。いま勤務医は激務と訴訟に耐えかねて開業へと流れています。私もその一人なので多くは語れませんが、開業医ばかり増加しても体制はよくなりません。勤務医の役割は大切で、極論ですが開業医がいなくても医療は成り立ちますが、病院がなくなればおしまいです。
特に産科をはじめとする救急医療体制は崩壊しつつあります。これを立て直すには、医師や看護師がいくらがんばっても無理で、一般の方々の協力が必要です。国や県の予算は不足しています。24時間いつでも連絡がとれ、夜間電話をうけて適当な医療機関を探すという基本的な機能がまひしています。これをコンビニエンスストアなど民間の力を借りたり、インターネットなどIT機器を利用したりすれば、より安価で効率的なシステムが構築できるはずです。
世にタダのものはありません。ダダに見えても誰かが代わりに費用を負担しているのです。送料無料の商品は通販会社が、無料トイレは管理者が、それぞれ負担しています。空気や太陽の光だってその自然を維持するには費用がかかるのです。日本はかつて老人医療が無料の時代があり、現在も一部福祉医療や救急車は無料ですが、それは保険者や自治体が負担しているのです。今は無料でも将来は耐えきれず有料になる恐れがあります。医療費の財源は限られた共有ものです。一人一人が考えて医療を受けましょう。
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麻しんの流行とワクチン
日本各地で10-20代を中心に麻しん(はしか)の流行が続いています。麻しんは感染力が非常に強く、かかってしまうと治療方法がなく、かつ重症化しやすいため、予防接種が最も大切です。もし、麻しんにかかったことがなくてこれまでワクチンを受けたことがない人は、早急にワクチン接種が必要です。しかし、ワクチンが全国的に不足しているためすぐに接種できないのが現状です。このため、もし学校で麻しん患者が発生した場合は、校内での流行を防止するため、毎朝自宅で検温し37.5℃以上の発熱がある場合は出席停止をお願いすることになります。さらに、流行が広がる時は「麻しん罹患歴がなくかつワクチン未接種者」も出席停止をお願いするかも知れません。
たとえ今回、麻しん発症がなく流行が去ったとしても安心はできません。ワクチン接種後も野生ウイルスに接触しなかった場合には、ワクチンによる免疫の持続期間は10年程度と考えられています。さらに、ワクチン接種しても数%で抗体ができないことがあります。このため今後も麻しんの流行が繰り返される事が予想され、これを阻止するため昨年からは、1才と6才に2回ワクチンを接種することが法律で規定されました。現在小学2年生以上(平成11年以前生まれ)の方は、ほとんどが1回しか接種していないでしょうから、ワクチンの供給が安定すれば2回目の接種をおすすめします。なお、この接種は保険適応とならず料金がかかり自己責任となります。麻しんにかかった人は終生免疫が得られるためワクチンの必要はありません。
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高血圧について
血圧の薬は一生必要とはかぎりません
血圧の薬を始めると一生飲まなければならないのでは、と心配しているかたが多いですが、そんなことはありません。塩分をひかえたり、運動をしたり、年をとってストレスが解消されてくれば血圧が下がり、薬を中止できる人がいます。血圧は年齢とともに上がっていくので、多くの人では薬を続けなければならないのですが、「日頃の行い」がよければ減らすことができます。寒い季節は血圧が上がることが多く、冬の間だけ薬を増やし、夏になると減らすということも多いです。
当院では食事や生活習慣を正すことによって、薬をなるべく少なくなるように、患者さんとともに努力しています。
血圧は低い方が体にやさしい
血圧は年齢に関係なく低い方が体にやさしいのです。特に心臓や脳や腎臓では高い血圧が負担となり心臓発作や脳卒中をおこしやすくなります。低い方がよいといっても、低すぎてめまいや立ちくらみをきたすようではいけませんので、ふらつきのない程度がよいでしょう。糖尿病や腎臓が悪い人ではそうでない人よりもさらに低めがよいです。
高血圧はきまった症状はありません
血圧が高くても通常は症状はありません。頭痛や肩こりなどがみられることがありますが、どちらが原因でどちらが結果かはっきりしません。放置しておくと、動脈硬化がどんどんすすみますので、症状のないうちからきっちりと下げましょう。
ご家庭で血圧を測りましょう
病院で測る血圧や健康診断のときの血圧は高くても心配はありません。血圧はちょっと緊張しただけ上がるので、測るたびに違うのです。それよりもご家庭でゆったりとしたときの血圧が大切です。家庭の血圧計を信用しましょう。測るタイミングは、朝起きてトイレをすませて、食事や仕事を始める前に1-2分休んだあとがよいでしょう。
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花粉症について
花粉症は一年中あります
ゴールデンウイークが終わった頃からスギやヒノキによる花粉症は減少してゆきます。しかし、スズメノテッポウ、オオアワガエリ、カモガヤといったイネ科の植物による花粉症は夏まで続き、秋にはブタクサやヨモギと、真冬の寒い時期をのぞいて花粉は年中飛んでいます。ハウスダストや家ダニによるものは季節に関係なくみられ、花粉症は一年中見られます。
早めの治療が大切
花粉の飛散の始まる2週間ぐらい前から薬を服用することが大切です。そうすることで、1)症状が出るのを遅らせる、2)ピーク時期の症状を軽くする、3)併用する強い薬の回数や量を減らすことができるからです。つまり、症状が出てからでは遅いのです。症状が出る前から薬をはじめましょう。
薬物療法
花粉症治療の中心となるのは薬物療法で、抗アレルギー薬が用いられます。「クシャミや鼻水」が多いタイプは抗ヒスタミン薬を、「鼻づまり」を主体とするタイプには抗ロイコトリエン薬を中心に使用しますが、いずれも服用してから効果が出るのに数日から数週間かかりますので、日数に余裕をもって開始する必要があります。薬は人それぞれに合う合わないがありますので、一番合った薬をさがします。たくさんの薬がありますので自分に合う薬は必ず見つかるはずです。
症状が強くなれば、点鼻薬や点眼薬、ステロイド薬が必要になります。これらは症状に合わせてご自分で量を調整してよいですが、漫然と使用するのはやめましょう。
花粉を家に持ち込まないために
花粉は一般に気温が高く、乾燥し、天気がよい日、風の強い日や雨上がりの翌日に多くとびます。こんな日は洗濯物は室内に干して、窓は閉めておきましょう。外出から帰ったら衣服に付いた花粉を払い落として、家に持ち込まないようにしましょう。また、うがい、洗眼をし鼻をかみましょう。掃除機で部屋をこまめに掃除して、舞い込んだ花粉を取り除きましょう。
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